「どういうこと?逆にグローバル化で英語がこれからもっと重要になるんじゃない?」と思う方もいらっしゃると思うが、まず明確にしたいのは、英語自体が衰退するというよりも、
英語教育の絶対視が相対視に変えて弱めていくということです。
なお、英語がどの立場から衰退するのかも明確すべき。多くの方にとって英語は「国際共通語」や「世界共通語」だが、これらの呼び方は決して排他的ではなく、同時に複数の国際語が共存できます。よく言われるのは、英語の人気さの前に、フランス語が世界中に最も勉強されていた外国語で、第二次世界大戦後の辺りから欧州が弱めて、その戦勝国の1つである米国の影響で英語に変わりました。英語が世界中に最も勉強されている外国語であることに異議がないが、これからはその状況が変わることがこの投稿の見解です。では、英語教育の圧倒的な人気さが弱めていく理由は以下の通りです。
1.英語圏の変化 (米国のスペイン語化、カナダのフランス語化)
2.準英語圏の変化 (多言語社会における英語教育による格差への解決、母語教育の強化)
3.非英語圏の変化 (国家主義の同時に移民で多言語社会、相互理解のために国語教育、多言語・複言語教育へ。人気を集める他の言語も)
4.国際関係の変化 (人工知能、世界経済、国際旅行と交流、隣語、言語教育を経済重視から個人の関心へ)
1.英語圏の変化。
「英語圏が変われば、それを見上げる他の国も変わる」。まずは英語が公用語、現地語である国に触れないといけません。その中は特に2つの大国、米国とカナダに触れたいと思います。まず米国国内の変化に関しては、米国は既にスペインやコロンビアを抜いて、スペイン語話者数で世界2位で(スペイン語は最も勉強される外語でもあり、13%の米国人の家庭言語でもあります)。このまま増加が続けると、スペイン語の影響がより社会、芸術、経済などで顕著化し、米国の経済的な優越性が続くかぎり、他の国も米国を真似し、英語以外にもスペイン語の学習も推進するだろう。
【米国各州におけるスペイン語話者の割合
(家でスペイン語を話す、英語は「とても流暢以下」)】(2017年)
なお、北のカナダはどうでしょう?多くの方が知らないが、カナダには2つの公用語があります:英語とフランス語。カナダでフランス語を使う主な地域であるケベック州の1つの特徴は、英語の影響からフランス語を守るための熱心とその言語政策です。カナダに行くと、英仏で書かれている情報がよく目にします。仏語圏のケベック州は英語の使用にかなり敏感で、ケベック州に移民した外国人は、最初の6か月間に市役所の情報などを英語で受けられるが、その以降はにフランス語のみで受けることになるので、移民してからすぐフランス語講座に在籍する外国人が多いです(次のドキュメントがおすすめ)。
2.準英語圏の変化。
「英語は母語話者数で世界一ではないが、外国語として話せる人口が世界一」というのは事実だが、この状況も変わるでしょう。英語が準公用語とする国、つまり準英語圏の状況も見逃してはいけません。特に準英語圏の中に最も注目される地域は南アジア(インド)と旧英帝国の植民地だったアフリカ諸国(例えば、ケニア)です。ここでの鍵語(キーワード)は「多言語社会」と「格差」です。インドの憲法は22か公用語を認め、その中に英語は準公用語です。インドの学校は大きく「ヒンディー語媒体教育」(Hindi medium)と「英語媒体教育」(English medium)で分類することができます(タミール語などのもあります)。教育課程の殆ど英語で学習する子どもとヒンディー語で学習する子どもの間に大きな格差があることが話題になっています。数年前にインドにおける英語教育による社会格差を描写する映画『Hindi Medium』もあります。英国の植民地でもあったアフリカのタンザニアのような国でも、英語を話せない子ども達に英語で勉強させて、その結果としての格差も指摘され、これからは子どもが理解できる現地語で教育を受けるような流れが見えています。
(1:51→「English isn't just a language in this country, it's a 'class'.」 この国では、英語はただの言語ではなく、「階級」です)
3.非英語圏の変化
ここで欧州連合、韓国、中国、日本の状況を見たいと思います。まずは欧州連合の場合は、前回のこの投稿で書いた通り、欧州連合の色んな加盟国の教育制度で学習されている言語の数が増えています。この多言語教育の中に、特にスペイン語の人気が増えています。なお、スペインのような国では、10年前以上からいわゆる「バイリンガル(英西)教育」が人気を集めたが、現在は格差、分類と学力の低下を招いたこの教育制度が批判されて、スペイン語だけでの教育が取り戻されています。「2030年バイリンガル計画」の基に同じ二言語教育(英中)を行っている台湾もその失敗が見えています。韓国国内は日本に似ていますが、海外を見ると世界中に韓国語が圧倒的な学習者数を集めています。中国の場合に英語がまだ人気だが、これから英語の負担を減らし、日本語やロシア語を優先するような声もありました。日本の場合は、英語教育の早期化が同じような格差をもたらし、英語が好きじゃない子どもも増えているなか、日本の教育には2つの選択があります。欧州諸国のように複言語教育を取り入れて英語以外の言語も学ぶか、スペインと台湾のように英語教育をより早期化するだけでなく、バイリンガル教育に変更して状況を更に悪化させるのか。教育以外にも、日本に多くの移民が来ているが、その殆どが同じアジア人で、英語話者ではありません。従って、ドイツやフィンランドと同じように、相互理解のために複言語教育を導入し、日本語教育を改善し、子ども達がベトナム語やネパール語を話せる同級生をより理解し、お互いにより良い教育の利益を得たら良いと思います。
4.国際関係の変化
ここでは国際関係に特に変化をもたらすと思っている人工知能と世界の動きについて触れたいと思います。
①まずは人工知能(AI)の発展。一言て言うと、優れた翻訳・通訳技術で、商業や観光でも浅いなやり取りを人工知能に任せれば、語学にはまだ意味があるのか?言い換えれば、AIですぐ翻訳・通訳できるのに、全国民を義務教育を通して10年間以上英語のみを強制的に勉強させる意味はまだあるのか?この時点で、2つの反論が考えられる。
反論1、【でも、AIは英語が必要な仕事のレベルまでに、そんなに上手にならないでしょうし、まだ学ぶ必要があるでしょう?】、
反論2、【AIが上手になっても、まだ相手と深くつながるために、相手の言語を学ぶ必要があるでしょう?】。
反論1はAIの効率性への疑いに基づいているが、まずはどのような仕事がAIの採用後に生き残れるかについて確認しないといけない。ここで私が想像するのは、曖昧さや失敗が許されない仕事、例えば、司法系、医療系の通訳者です。ただこういう仕事をやっている日本人口の割合がどれぐらいいるでしょう?。相手の文化を理解し、相手と仲良くするという反論2は、最近さまざまな英会話のサイトで使われているが、これ「じゃ、相手の文化を理解し、相手と深く仲良くなるというのは、まさに英語じゃなくてもいい」と完全に言っている。
② 【世界の動き:経済と交流】 近年注目を集めているのはBRICSです。その殆どの加盟国は非英語圏で、数も増えています。そしてコロナ禍以降国際旅行が増えて、上述のAI翻訳の利点だけでなく、人間は新しい目的地を訪れ、より多くの国の人と遭遇しています。そのこの国際旅行の基礎にあるのは、遠い目的地よりもまずは隣国で、結果として隣国の言語、言い換えればその「隣語」を学ぶ重要性をもっと感じやすくなりました。1つの例文を見ると、スペイン語を本気で学んでいる日本人の中によくあるパターンがあります。それは、米国に留学していた時に現地の多くのスペイン語話者の存在に気付き、日本に戻ってスペイン語を学び始める人もいます。このように世界が変わっているだけでなく、より多くの人がその世界に気付いています。その結果、世界で移動する時は英語だけで不十分だという結論にいたる人も増えています。
結論: 英語教育の人気さがしばらく続きます。ただし、減るというよりも、他の言語も注目されることによって、英語教育を絶対視する単一言語教育ではなく、英語がより相対的な価値として見られ始めています。欧米の経済重視の言語教育から学習者の関心と会話相手の言語への尊重に触れる複言語教育に変わっていくでしょう。